自宅サロンの開業を検討している方の中には、特別な資格や免許が必要なのではないかと考えている方も多いでしょう。国家資格が不要で、フェイシャルエステを提供しないエステサロンであれば、実は自宅サロンの開業は無資格・無免許で始めることができます。
とはいえ、資格や免許に意味がないわけではなく、肩書きを持つことで集客効果や訴求力アップに期待できるため、今から資格取得を目指すのも選択肢の一つになります。自宅サロンを開業する前に、他店でエステティシャンとして勤めながら勉強を始めるのも良いでしょう。
本記事では、自宅サロンの開業で役立つ資格と、資格取得のメリット・デメリット、そして自宅サロン開業の注意点などについて解説していきます。
自宅サロンは資格なしでも開業できる!
まず前提として、自宅でエステサロンを開業する際に、原則として資格や免許は不要です。内装工事や業務用エステ機器の設置が不要な自宅サロンであれば、今すぐに開業することも可能です。
ただし、国家資格を使って施術を提供する場合や、首から上のフェイシャルエステを提供する場合には、「美容所」として保健所へ届け出る必要があります。
こちらのケースには、まつ毛マットやまつ毛エクステを提供するエステサロンも含まれるので、これらの施術を提供したい場合には開業前に保健所に相談すると良いでしょう。
上記のケースを除いて自宅サロンの開業では資格・免許は不要ですが、取得した資格・免許が役に立たないわけではありません。エステティシャンとしての資格を取得し、店舗のHPや名刺などに記載しておくことで、お客様に選んでもらえる可能性が高まるからです。
自宅サロン開業で資格を取得するメリット
自宅サロン開業で資格を取得するメリットには、主に次の2つが挙げられます。
エステティシャンとしての基礎知識が身につく
一つ目は、エステティシャンとしての基礎知識が身につくメリットです。資格取得のためには、テキストやスクールなどを利用し、試験に合格するための知識・スキルを学ぶ必要があります。
その過程でエステティシャンとしての基礎知識が身につき、自宅サロンを開業した後も顧客満足度アップに役立てることができるでしょう。
サロンの集客効果がアップする
二つ目は、サロンの集客効果がアップするというメリットです。資格を保持しているということは、それだけエステティシャンとしての高い技術を持っていることを意味するので、お客様にとっても安心して予約を入れることができます。
顧客心理として、無資格のエステティシャンよりも資格を持つエステティシャンから施術を受けたいと考えるのは自然なことなので、サロンの新規集客やリピート率向上にもつながります。
自宅サロン開業で資格を取得するデメリット
一方で自宅サロン開業に合わせて資格を取得するデメリットには、次の2つが挙げられます。
取得のための時間・費用がかかる
一つ目は、資格取得のための時間・費用がかかるというデメリットです。エステティシャンとしての資格は、実務経験があると試験でも有利になる可能性は高いですが、まったく勉強せずに合格を目指すのも困難です。
そのためまとまった時間を取って資格取得の勉強に取り組む必要がありますが、その結果自宅サロンの開業タイミングが後ろ倒しになることに注意が必要です。
不合格となるリスクがある
二つ目は、不合格となるリスクがあるというデメリットです。資格取得に向けて勉強したとしても、必ずしも合格するとは限りません。膨大な時間とお金を費やしたにも関わらず、不合格となり資格が取れずに終わる可能性も十分考えられます。
資格取得の勉強の中でスキル・知識が身につくため無駄にはなりませんが、後になって後悔する可能性も出てくるでしょう。
自宅サロン開業で役立つ資格
自宅サロンの開業において資格・免許は必須ではありませんが、以下のような資格があると、サロン経営を有利に進めやすくなります。
- AJESTHE認定(上級)エステティシャン
- CIDESCO国際ライセンス
- AEA認定エステティシャン
それぞれの資格について、特徴や取得要件について解説しましょう。
AJESTHE認定(上級)エステティシャン
「AJESTHE認定エステティシャン」は、日本エステティック協会が認定するエステティシャン向けの資格です。認定校で300時間以上コースまたは1,000時間以上コースを修了するか、1年以上の実務経験を持つ方に受験資格があり、エステティシャンセンター試験の技術試験・筆記試験に合格することで資格取得が可能です。
また、上位資格である「AJESTHE認定上級エステティシャン」は、認定校で1,000時間以上コースまたはCIDESCO国際認定校コースを修了して認定校試験に合格する必要があるなど、受験資格も難易度も高い資格です。その分、エステ機器の扱いやメイク・ネイルに関する技術を身につけることができるため、エステティシャンとして幅広いスキルを学びたい方におすすめです。
CIDESCO国際ライセンス
「CIDESCO国際ライセンス」は、スイスに本部を構える国際組織「CIDESCO(シデスコ)」が展開する国際認定校を卒業、または試験に合格することで得られる資格です。エステ業界では国際的に通用する資格のため、お客様への訴求力も格段にアップします。
受験資格には、国際認定校において1,200時間以上の教育課程を修了して試験に合格、またはエステティシャンとして3年以上の実務経験を持つ方が試験に合格することなどが挙げられています。受験資格が厳しく、合格までのハードルも高いですが、取得すれば他店との強力な差別化にもつながるでしょう。
参照:CIDESCO-NIPPON「CIDESCOディプロマとは」
AEA認定エステティシャン
「AEA認定エステティシャン」は、日本エステティック業協会が認定する資格で、AEA認定校での300時間以上のコースを履修することで資格取得を目指せます。実務経験を持つ方は上位資格へのステップアップも可能で、「AEA上級認定エステティシャン」「AEA認定インターナショナルエステティシャン」などを取得することにより、より高い技術力を持つエステティシャンであることを証明できます。
自宅でエステサロン開業がおすすめな理由とは?
続いて、資格を活かして自宅サロンを開業するメリットや、開業をおすすめする理由についてご紹介します。自宅サロンを開業するメリットには、以下の3つが挙げられます。
- 少ない開業資金で始められる
- 通勤時間が不要
- お客様との信頼関係を築きやすい
それぞれ解説していきましょう。
少ない開業資金で始められる
自宅サロンの場合、賃貸マンションやテナントを借りる場合と比較し、少ない開業資金で始められるメリットがあります。特にテナントサロンの場合、20坪の平均的な広さで約20万円の賃料が相場であり、保証金として契約時におよそ半年分の支払いが求められるため、物件の契約時に120万円の資金が必要となるケースがあります。
一方で自宅サロンの場合には、住宅ローンの負担がなければ家賃や賃料は無料で、築浅の戸建て住宅であれば内装工事・リフォームも不要となることもあります。業務用エステ機器の購入費や消耗品の購入費を除けば、ほぼ無料で開業できることが大きな魅力です。
通勤時間が不要
自宅サロンは、ご自身の住まいが職場を兼ねているため、移動時間や通勤時間が発生しません。営業時間もご自身で決められるため、家事や趣味の時間も確保できてワークライフバランスを実現しやすい環境が手に入ります。小さなお子さんがいる方や、介護が必要な家族がいる方にとっても、時間が自由になる自宅サロン開業は非常におすすめです。
ただし自宅が職場を兼ねることで、仕事とプライベートのオン・オフが切り替えにくくなる方もいらっしゃるので、サロンの営業時間外は施術スペースに入らないなど、メリハリをつける工夫が必要になるでしょう。
お客様との信頼関係を築きやすい
自宅サロンはお客様との距離が近く、一対一の信頼関係を築きやすいメリットがあります。閑静な住宅街の中で施術を受けられる環境なら、繁華街の雑居ビルでエステを受けるよりも、リラックスして過ごせるでしょう。仲良くなった常連さんを自宅の生活スペースに招き、お茶をしながら過ごしたりするのもご自身の自由です。
ただし自宅の生活感が出過ぎてしまえばお客様にとってもリラックスしにくい環境となってしまうので、施術スペースはすっきりと整理整頓し、壁紙や照明の交換やリフォームも検討してみましょう。
自宅サロンは儲かる?サロンオーナーの年収について
自宅サロン開業を考えている方の中には、サロンオーナーとしてどのくらいの年収が得られるか気になる方も多いでしょう。私たち株式会社b-modelsがサロン経営コンサルティングに携わった経験からご紹介すると、自宅サロン開業のサロンオーナー様で平均年収は500万円ほどであるというデータがあります。プライベートサロン開業の場合には、平均年収は400万円ほどです。
ただしこの年収は、サロンの売上から経費や利益を差し引いた、サロンオーナーへの役員報酬の金額です。エステサロンは固定費となる経費が少ないため、たとえば月100万円の売上のうち、60万円を役員報酬として受け取って年収700万円を目指すことも十分可能です。
働く場所や働く時間を自由に決められ、ご自身のスキルと技術だけで会社員の平均年収を上回る収入が得られる可能性もあるため、理想の働き方に非常に近い状態といえるでしょう。サロンオーナーの年収については、下記のページでも詳しく扱っているのでぜひ参考にしてください。
自宅でエステサロンを開業する時の注意点
最後に、自宅サロンを開業する際に押さえておきたい注意点について、次の4つを解説します。
- 集客のハードルが上がる
- セキュリティ面や営業許可に配慮が必要
- 家族や近隣の理解を得る必要がある
- 開業届を忘れずに提出する
それぞれの対策方法や手続き方法についてもご紹介しているので、ぜひチェックしてみてください。
集客のハードルが上がる
自宅サロンは、主に戸建て住宅の一室を改装・リフォームして、コンパクトな施術スペースでエステサロンを経営する方法です。そのため自由な立地選びが難しく、現在の自宅の立地条件に縛られるため、集客が難しくなる可能性が高いです。駅やバス停から遠くてアクセスが悪いエリアであれば、お客様が予約するハードルも高まってしまうでしょう。
そのため自宅サロンの開業では、可能な限り早めに集客に取り組むことをおすすめします。オープン前からSNSアカウントやYouTubeチャンネルなどを運用し、エステに興味がある地元のお客様にアプローチを図ってみましょう。SNSを使った集客は低コストで運用できるため、個人サロンにも最適です。
セキュリティ面や営業許可に配慮が必要
自宅サロンの開業では、自宅の住所や電話番号をWeb上に公開することになるため、セキュリティ対策を十分に施す必要があります。防犯カメラの設置やホームセキュリティ会社との契約など、強盗のリスクを抑える準備を済ませておくと安心です。
また、自宅が賃貸マンションや分譲マンションの場合には、エステサロンを開業しても問題ないか、家主や管理組合に問い合わせておくことも必要です。居住用と店舗用では、家賃に課される消費税の扱いや、消防法・建築基準法での扱いが異なってくるため、無断で営業することのないよう注意してください。
家族や近隣の理解を得る必要がある
自宅サロンの生活スペースに同居する家族がいる場合には、エステサロンの開業についてしっかりと理解を得ておくことも大切です。自宅サロンを開業したことで家族にストレスが溜まり、サロン経営に反対されるような事態は避けたいところです。営業時間の短縮や平日の昼のみの営業、完全予約制とするなど、家族への影響を最小限に抑えられるような経営スタイルを検討しましょう。
同様に、お客様が出入りすることに対して不安を抱かないよう、近隣住民の方ともコミュニケーションを取っておくのも大切です。近隣住民の方と信頼関係を築くことで、来店につながるきっかけになることもあるので、丁寧な近所付き合いを心がけましょう。
開業届を忘れずに提出する
自宅サロンに限らず個人で事業を始めた際には、開業から1ヵ月以内に税務署へ「開業届」を提出する必要があります。その際には、所得税の確定申告で税制優遇を受けられるよう、「青色申告承認申請書」を併せて提出しておくことをおすすめします。
開業届は国税庁のHPからダウンロードできるほか、税務署の窓口で書類を受け取ることもできるので、開業後は早めに提出しましょう。
まとめ
自宅サロンの開業には、特別な資格・免許は不要ですが、エステティシャン関連の資格を取っておくと集客効果アップにつながります。そのため開業前に勉強して取得したり、サロン経営の合間を縫ってスクールに通ったりするのもおすすめです。
ただし資格取得のための勉強には、時間や費用がかかるほか、必ずしも合格するとは限りません。すでに高い集客効果が見込まれる場合や、開業のタイミングを前倒ししたい場合には、資格取得よりも開業を優先しても良いでしょう。本記事でも解説したおすすめ資格を参考に、自宅サロンの開業準備を進めてみてください。
なお、失敗しない自宅サロン開業のためには、エステティシャン関連の資格取得だけではなく、サロン経営の専門家による「開業・経営支援」を活用することも効果的です。私たち株式会社b-modelsでも、業務用エステ機器の導入から開業支援までワンストップで提供していますので、興味がある方はお気軽にお問い合わせください。