自宅サロンは、戸建て住宅やマンションの一室を店舗として使い、エステサロンや脱毛サロンを経営することを指します。テナントを借りる場合と比べて初期費用を抑えられ、物件探し・契約手続きの手間をカットできるため、低コストでサロン開業を始めたい方に向いています。
ただし自宅サロンでは集客面で不利になる可能性が高く、リフォームや内装工事にかかる費用が膨らむこともあります。そのため自宅サロンの開業は、メリット・デメリットや必要な開業資金を踏まえて検討することが大切です。
本記事では、自宅サロンを開業するまでの具体的な手順や資金、利用できる補助金・助成金についても解説しています。失敗しない自宅サロン開業のためのポイントも取り上げているので、ぜひ最後までご覧ください。
自宅サロン開業の概要
自宅サロンは、マンションサロン・テナントサロン・出張型サロンなどの出店形態の一つで、主に戸建て住宅を改装してエステサロンを開業することをいいます。賃貸マンションやアパートでも自宅サロンを開業できることがありますが、事務所利用や商用利用が禁止されている物件では開業できないため、一軒家の住まいを活用して開業するケースが一般的です。
ここでは自宅サロンを開業するメリット・デメリットについてそれぞれ解説します。
自宅サロン開業のメリット
自宅サロン開業のメリットに挙げられるのは、次の3つです。
- 開業資金や運転資金を抑えられる
- リフォームや改装に制限がなく、自由に店舗を作れる
- 通勤時間・移動時間が不要なので仕事・家庭を両立しやすい
自宅サロンを開業する最大のメリットは、開業までのハードルが低く、リスクを抑えられる点です。テナントサロンと比べて開業資金や運転資金を安く抑えられるため、たとえお客様からの予約で埋まらなくても、赤字になる心配が少ないメリットがあります。
また、自己所有の戸建て住宅であれば、テナントやマンションを借りる場合と比べて、リフォーム・内装工事に制限がありません。そのためこだわりの店舗や世界観を表現しやすく、ご自身の理想のお店を実現しやすい点もメリットです。
自宅がそのまま職場となるため、通勤時間や移動時間がかからず、その分の時間を家事や施術に充てられることも、ほかにないメリットとなるでしょう。小さいお子さんや介護が必要なご両親がいるサロンオーナー様にとっても、自宅サロン開業はワークライフバランスを実現しやすい開業方法です。
自宅サロン開業のデメリット
一方で自宅サロン開業のデメリットには、以下の3つが挙げられます。
- 自宅と職場が一体化しているため、オン・オフの切り替えが難しい
- 自宅の住所を公開するためセキュリティ対策が必要
- 立地条件を選べないため集客面で不利になりやすい
自宅と職場が一体化している自宅サロンは、オン・オフの区別をつけるのが難しく、まるでブラック企業で働いているかのような働き方になるケースも少なくありません。特に売上や予約が少なく、不安や心配事が多い開業直後には、多大なストレスを抱えるオーナー様も多くいらっしゃいます。
また、自宅サロンはご自身の住所・電話番号などの個人情報を不特定多数に向けて公開することになるため、セキュリティ面には十分な配慮が必要です。ホームセキュリティの会社と契約したり、電話転送サービスを活用したりと、強盗・盗難のリスクには万全の備えを用意しなければなりません。
自宅サロンは、今の家が建っている場所で開業することから、立地条件が選べず、集客面で不利になることが多いです。人通りが少なく駅やバス停からも遠いエリアでは、お客様が予約するまでのハードルも高まってしまいます。そのため高性能な業務用エステ機器を導入したり、SNSやWebを使った集客に力を入れたりと、遠方からでも通いたくなるサロン作りが求められるでしょう。
関連記事:自宅サロン開業に必要な資格とは?開業するメリットとデメリットを解説
自宅サロン開業の手順
次に、自宅サロンを開業してお客様を迎え入れられる状態になるまでの手順について、以下の7ステップに沿ってご紹介します。
- サロンのコンセプト・事業計画を決める
- サロンで使用する部屋を用意する
- 開業資金を準備する
- サロンの設備・備品を購入する
- 集客・宣伝方法を検討する
- 開業届・営業許可を申請する
- 営業準備
資格・免許や営業許可の取得、保健所への届出が必要となるケースもあるので、正しい手順を踏み、違法営業にならないよう注意しましょう。
サロンのコンセプト・事業計画を決める
自宅サロンを開業するためには、まずはサロンのコンセプト・事業計画を立てることが重要です。お店のコンセプトは、サロンの方向性や世界観を決め、集客するターゲット層を決めるために欠かせません。サロンの軸を決めておくことにより、多店舗展開したりスタッフを採用したりする際にも、方向性のブレを防げるメリットがあります。
また、事業内容や事業戦略などを具体的に定めた事業計画書を作成しておくと、金融機関から融資を受けたり国の補助金・助成金を受けたりする際に役立ちます。将来の売上目標や収支計画を定めておけば、経営状況に合わせた軌道修正にも取り組みやすくなるでしょう。
サロンで使用する部屋を用意する
次に、自宅サロンで使用する部屋を用意しましょう。必要以上に生活感が出てしまわないよう、ご自身の生活スペースとは区別して施術室を用意するのがポイントです。完全予約制としない場合には、待合室や駐車場なども手配しておくと安心です。間取りを変更したり内装を整えたりしたい場合には、リフォームや改装を検討しても良いでしょう。
自宅サロンで必要なスペースや間取り例については、下記の記事でもご紹介しているので参考にしてみてください。
関連記事:自宅サロンの間取り例を紹介!必要なスペースや注意すべきポイントとは?
開業資金を準備する
自宅サロンの開業資金は、業務用エステ機器の導入費用を除き、約50万円〜110万円が目安です。自宅をそのまま店舗として利用できるため、物件の契約金や保証料は不要となりますが、内装工事費やリフォーム代を見積もっておく必要があります。備品や消耗品費、広告宣伝費のほか、およそ半年分の運転資金を用意しておくと安心です。
開業資金はご自身の貯金でまかなうことが理想ですが、もし資金が不足する場合には、金融機関からの融資や国の補助金・助成金を検討する必要があります。
開業資金の内訳に関する詳細は、本記事の後半でも解説しています。
サロンの設備・備品を購入する
事前に用意した開業資金を使い、自宅サロンの内装や備品、業務用エステ機器などを揃えましょう。自宅サロンで必要な設備・備品には、以下のようなものが挙げられます。
- 業務用エステ機器
- 施術用ベッド
- ワゴン
- スツール
- タオルウォーマー&クーラー
- タブレット・POSレジアプリ
- 事務用デスク・キャビネットなど
サロン用の消耗品も新たに買い揃える場合には、下記のようなアイテムも準備しておくと良いでしょう。
- バスタオル・フェイスタオル
- シーツ類
- オイル・ジェル類
- ペーパー下着
- スリッパ
- カップ・グラス、飲み物
- カウンセリングシート
- 筆記用具など
まずは最低限必要な備品のみを用意し、実際に施術を行う中で必要となったものを都度買い揃えていくのがおすすめです。エステサロン開業で必要なものについては、下記の記事でもまとめていますので併せて参考にしてください。
関連記事:エステサロン開業に必要なもの!揃えておくべき必要な備品とは?
集客・宣伝方法を検討する
自宅サロンを開業する際には、集客・宣伝方法についても早めに検討しておくことが大切です。立地条件により集客面で不利になりやすい自宅サロンでは、オープン前からSNSアカウントやポスティングを行い、集客を図ることが重要となります。
集客・宣伝方法には、主にオンライン・オフラインの2種類がありますが、オンラインの集客であれば無料で始められるものも多くあります。たとえば、TwitterやInstagram、YouTubeなどのSNSを活用したり、LINE公式アカウント、ブログなどで情報発信したりするのもおすすめです。いずれも無料で簡単に始められるため、集客方法の一つとして活用してみましょう。
開業届・営業許可を申請する
自宅サロンを開業する際には、事業の開始から1ヵ月以内に税務署への「開業届」の提出が必要です。開業届を提出する際には、「青色申告承認申請書」を併せて出しておくと、所得税の確定申告の際に税制優遇を受けられるため、忘れずに提出しておきましょう。
また、以下のいずれかに当てはまる場合には、自宅サロンの開業の際に保健所への届出が必要となります。
- フェイシャルメニューを提供する場合
- 国家資格を必要とするメニューを提供する場合(美容師・あん摩マッサージ指圧師など)
保健所への届出が必要なサロンの場合には、開業前に店舗部分の検査を受ける必要があるためご注意ください。
関連記事:エステサロン開業時に保健所への届け出は必要?手続きや申請方法を解説
営業準備
前述の流れで開業準備を進めたら、あとはお客様を迎え入れて営業開始です。実際に営業を開始してみて、必要な備品・消耗品があれば買い揃え、お客様のニーズが高い施術メニューがあれば業務用エステ機器の導入も検討してみましょう。
なお、個人事業を開始すると、毎年2月〜3月に確定申告の手続きが必要となります。確定申告の際には、日々の売上・経費を帳簿にまとめ、1年間の利益と所得税額を計算しなければならないため、開業後から早めに準備しておきましょう。
自宅サロン開業に必要な資金・開業費
自宅サロン開業の初期費用は、前述の通り、約50万円〜110万円が目安です。ここでは初期費用の内訳について、各項目で詳しくご紹介していきます。
内装工事費・リフォーム代
自宅サロンを開業する場合、築年数が経過しているほど外装・内装のリフォームが必要になることが多いでしょう。自宅サロンで生活感が出過ぎてしまうと、お客様にとってリラックスしづらい空間となり、リピート率の低下を招いてしまいます。築浅の場合には、壁紙や照明を変えるだけでも雰囲気を整えることは可能なので、予算に合わせて内装工事・リフォームを実施しましょう。
平均的な予算は、約10万円〜30万円ほどです。
業務用エステ機器の導入費用
施術時間の短縮や回転率の向上、客単価アップのために役立つ業務用エステ機器は、約100〜500万円が本体価格の相場です。メーカーによっては、別途送料や設置費用、研修費用などが請求されることもあるので、見積もり時に確認しておくと良いでしょう。
なお、中古品の業務用エステ機器を検討されるサロンオーナー様も多いですが、中古品は十分な製品保証やメンテナンスが受けられない可能性があるため注意が必要です。初期費用を抑えたい場合には、分割払い・ローンやレンタルプランでの支払いが可能なものを選ぶと良いでしょう。
設備・消耗品の購入費
前述したエステサロンの備品・消耗品は、数万円〜20万円ほどの予算を見積もっておくと良いでしょう。電動式のベッドを導入したり、予約管理のためのタブレットを複数台購入したりすると、開業資金が高額となるケースもあります。一度に大量の消耗品を購入する場合は、卸業者からの割引を受けられることもあるので、見積もりの際に問い合わせてみましょう。
運転資金
自宅サロンの開業後も安定して経営できるよう、およそ半年分の運転資金を用意しておくと安心です。運転資金はサロンによっても異なりますが、家賃・賃料の支払いがない自宅サロンでは、月5万円ほどを目安とすると良いでしょう。月5万円の運転資金であれば、半年分で30万円を開業資金として準備することをおすすめします。
自宅サロン開業に使える助成金・補助金を紹介
自宅サロンの開業では、厚生労働省が実施する「助成金」や中小企業庁などが実施する「補助金」を受けられることがあります。支給を受けるためには、事業計画書などの書類を提出して審査を受ける必要はありますが、いずれも返済不要の資金として活用できるため、積極的に検討してみると良いでしょう。
自宅サロンで利用できる主な助成金・補助金をまとめると、下記の通りです。
・小規模事業者持続化補助金
・IT導入補助金
・ものづくり補助金
・地域雇用開発助成金
・人材開発支援助成金
・キャリアアップ助成金
それぞれの補助金・助成金の応募要項や必要書類については、下記の記事で詳しくご紹介しているので併せてご覧ください。
関連記事:エステサロン開業で使える助成金と補助金!申請方法も紹介
自宅サロンは儲かる?サロンオーナーの年収事情
自宅サロンの開業を検討する中で、本当に利益が出るのか不安に感じる方も多いでしょう。サロンオーナーの平均年収は調査した統計が少ないため明確に判断はできませんが、エステ経営コンサルティングを提供する私たち株式会社b-modelsのデータでは、月100万円の売上が目安となっています。
あくまでもこちらは売上(月商)なので、月100万円がそのままサロンオーナーの収入になるわけではありません。年間の売上・経費・税金などを考慮すると、自宅サロンオーナーの平均年収は約500万円と予想されます。詳しくは下記のページでも解説しているので、ぜひ参考にしてみてください。
失敗しない自宅サロン開業のポイントと気をつけること
最後に、失敗しない自宅サロンを開業するために押さえておきたい、3つのポイントについてご紹介しましょう。
サロンの強みやコンセプトを明確にする
自宅サロン開業を成功に導くためには、他店にはない強みやコンセプトを明確にしておくことが大切です。健康的に痩せられる痩身エステや、家族で受けられる脱毛エステなど、はっきりしたコンセプトがあるお店の方がターゲット層を絞りやすく、売上アップにもつながります。
周辺にあるエステサロンを調査して、コンセプトやターゲット層が重複しないよう確認しながら、ご自身のお店の強みを作っていくのもおすすめです。
WebやSNSを活用して集客する
集客面で不利になりやすい自宅サロンは、看板やチラシはもちろん、WebやSNSを活用した集客方法にも力を入れることをおすすめします。Twitter、Instagram、YouTubeなどのSNSであれば、アカウント開設に費用がかからず低コストで運用できるため、ランニングコストを抑えたい個人サロンにも向いています。
一方でWeb広告やHP制作の外注は、高額な外注費用がかかるため、経営が軌道に乗ってから検討することをおすすめします。
家族や近隣とのコミュニケーションを重視する
自宅サロンを開業する際には、同居する家族や近隣住民の方の生活にも影響を与えることを考慮して、開業の前からしっかりとコミュニケーションを図りましょう。自宅サロンの開業後は、不特定多数のお客様が頻繁に自宅へ出入りすることとなります。
近隣住民に不安を抱かせたり、家族にストレスを与えたりしないためにも、しっかりと理解を得るようにしてください。
まとめ
自宅サロンの開業では、マンションやテナントを借りて店舗をオープンする場合と比べ、開業費用や家賃・賃料などのランニングコストを抑えられるメリットがあります。一方でセキュリティ対策が不可欠であることや、集客面で不利になりやすいデメリットも押さえておく必要があります。
自宅サロンの開業準備を進める際には、業務用エステ機器の導入や、開業届の提出、保健所の検査を受ける必要がある場合は早めの届出を忘れないようにしましょう。本記事でもご紹介した開業の手順を踏まえ、違法営業にならないよう準備を進めてみてください。
なお、失敗しないエステサロン開業のためには、ターゲット・コンセプトの明確化や集客方法の検討に加えて、サロン経営の専門家による「開業・経営支援」を活用することも効果的です。私たち株式会社b-modelsでも、業務用エステ機器の導入から開業支援までワンストップで提供していますので、興味がある方はお気軽にお問い合わせください。