エステ機器の導入を検討する際や、確定申告のための減価償却費を計算する際に欠かせないのが「耐用年数」という考え方です。耐用年数は、エステ機器やパソコンといった資産の使用期間の目安であり、この耐用年数をもとに経費や税金を計算します。
そのため正しく耐用年数を把握しなければ、税金を本来よりも多く納めたり、本来よりも少なく納めて税務署に指摘されたりする可能性も出てきます。また、言葉が似ていて混同しやすい「耐久年数」との違いを把握しておくことも、最適な業務用エステ機器選びには欠かせません。
本記事では、エステサロンで利用する業務用エステ機器の耐用年数・耐久年数と、耐用年数をもとに計算する減価償却費について解説します。経理処理の具体例についても解説しているので、ぜひ最後までご覧ください。
国税庁が定める業務用エステ機器の耐用年数は5年
エステ機器の耐用年数は、国税庁が公表している『減価償却資産の耐用年数表』にて調べることが可能です。業務用エステ機器は、「器具・備品」のうち「理容・美容機器」の種類に当てはまり、耐用年数は5年と定められています。
つまり、法律で定められた業務用エステ機器の使用年数は5年が目安であり、業務用エステ機器の購入代金を分割して経費計上する「減価償却」を行えるのも5年が上限ということになります。なお、耐用年数はあくまでも会計上の使用年数であり、適切にメンテナンスされていれば5年以上使い続けることも可能です。
6年目からは業務用エステ機器の購入代金は経費計上できなくなりますが、すぐに買い替えが必要となるわけではないのでご安心ください。たとえば木造住宅の法定耐用年数は22年ですが、実際には築100年以上の木造の日本家屋が残っていることをイメージするとわかりやすいでしょう。
エステ機器の耐用年数と耐久年数の違い
耐用年数と混同しやすい言葉として「耐久年数」という表現が挙げられます。どちらもエステ機器の使用期間を表していますが、年数を定めているのが国税庁なのか、それともメーカーなのかという違いがあります。それぞれの言葉の違いについて、詳しくご紹介しましょう。
耐用年数
「耐用年数」は前述の通り、法律によって定められた資産の使用期間の目安です。減価償却という経理処理において、どのくらいの年数に分割して経費計上するかを決める要素でもあり、資産の種類や用途によって厳密に年数が定められています。
減価償却は、業務用エステ機器など使用期間に応じて価値が下がっていく備品や建物を経理処理する際に、1年でまとめて経費計上するのではなく、複数年に分割して経費計上することを指します。たとえば、100万円で購入した業務用エステ機器は、1年目に100万円の経費として計上するのではなく、1年目に20万円、2年目に20万円、3年目に20万円……と5年にわたって分割して経費計上します(定額法の場合)。
ちなみに、資産の中でも「土地」については、使用期間によって価値は下がらないとされ、耐用年数は存在せず、減価償却は認められないという特徴があります。
耐用年数はあくまで便宜上定められた年数でもあるため、実際の使用可能年数とは異なり、適切にメンテナンスされた業務用エステ機器であれば5年以上使えることが大半です。
耐久年数
一方の「耐久年数」とは、業務用エステ機器のカタログやスペック表などに記載される、メーカーが独自に定めた使用年数の目安です。法律で決められた耐用年数とは一致しないこともあり、誤って耐久年数で減価償却を計算してしまうと、所得や納税額に過不足が発生し、修正申告が必要になるため注意が必要です。
似たような機能を持った業務用エステ機器でも、メーカーによって耐久年数が異なるケースも少なくありません。こちらの年数もあくまでも目安のため、耐久年数よりも寿命が長くなることもあれば、短くなることも考えられます。
耐久年数が長い業務用エステ機器ほど長く使えるマシンであると判断できますが、メーカーがどのような根拠で耐久年数を定めているのかはしっかりと確認しておく必要があります。
ベッド・パソコン等の主なエステ機器の耐用年数
業務用エステ機器の耐用年数は5年であることは前述した通りですが、エステサロンでは他にもベッド・パソコン・家電といった機器を使用するケースが多いでしょう。新たな店舗を新築する場合には、建物も減価償却の対象となるため、耐用年数を把握しておく必要があります。
以下の表ではエステサロンで使用する器具・備品の耐用年数をまとめているので、ぜひ参考にしてください。
エステ機器・建物の種類 | エステ機器の耐用年数 |
---|---|
施術用のベッド | 8年 |
パソコン・タブレット | 4年 |
冷蔵庫 | 6年 |
洗濯機 | 6年 |
エアコン | 6年 |
消毒殺菌用機器 | 4年 |
手術機器 | 5年 |
木造の店舗 | 22年 |
鉄骨造の店舗 | 19年〜34年 |
鉄骨鉄筋コンクリート造の店舗 | 39年 |
なお、購入代金が10万円以上30万円未満の資産は「少額減価償却資産」として購入した年に一括で経費計上できる特例や、購入代金が20万円未満の資産を「一括償却資産」として一律3年の期間で経費計上できる特例も存在します。これらの制度を利用すると、経理処理の手間を減らしながら大きな節税効果を得ることも可能になります。
少額減価償却資産や一括償却資産について詳しくは、最寄りの税務署または税理士に相談してみると良いでしょう。
参照:国税庁「少額の減価償却資産及び一括償却資産(令第138条及び第139条関係)」
エステ機器の経理処理で欠かせない減価償却とは?
エステサロン経営でエステ機器の耐用年数を把握しなければならないのは、「減価償却」という経理処理に必要な要素だからです。減価償却は、簿記についての知識がない方にとっては難しく感じられる処理のため、ここからは減価償却の考え方や計算方法についてわかりやすく解説していきます。
減価償却の概要
減価償却とは、業務用エステ機器のような高額な資産を経理処理する際に、1年でまとめて経費計上するのではなく、耐用年数に応じて複数年にわたり経費計上することを指します。
たとえば、500万円で購入した業務用エステ機器は、定額法を使って減価償却する場合、「購入代金500万円 ÷ 耐用年数5年 = 減価償却費100万円」と計算して、毎年100万円ずつ経費計上します。6年目以降は経費計上ができなくなり、会計上は業務用エステ機器の価値がゼロになったものとして扱います。
業務用エステ機器のように長期にわたって使用する資産は、1年目でまとめて経費計上してしまうと、2年目以降で計上できる経費が少なくなり、所得が増えて納める税金が増えてしまうデメリットがあります。そこで減価償却を使って複数年で少しずつ経費計上することで、長期にわたって節税効果を得られるメリットがあります。
減価償却費を計上する理由
業務用エステ機器のような資産を購入して事業を行う個人・企業は、必ず減価償却を計算しなければならないと定められています。なぜなら、減価償却しなければエステサロンの経営状況が正しく反映されなくなってしまうからです。
たとえば、1年間の売り上げが1,000万円のエステサロンで、500万円の業務用エステ機器を新たに導入したとしましょう。この場合、業務用エステ機器の購入代金を一括で経費計上してしまうと、それだけで残る利益は500万円に下がってしまいます。ここから賃料・電気代・消耗品代・人件費などを差し引くと、赤字になってしまうことも十分考えられます。
実際にはお客様からの予約が埋まり1ヵ月あたりの利益が上がっているにも関わらず、たまたま設備投資したせいで大幅に年間の利益が下がってしまうと、エステサロンの実態とはかけ離れた経営状況となってしまいます。その結果、赤字体質のエステサロンであるとみなされて、金融機関からの融資が受けにくくなったり、テナントを借りづらくなったりするデメリットが生まれてしまいます。
そうした不利益を避けるためにも減価償却は非常に重要な経理処理であり、減価償却費の計算に必要な耐用年数を把握することもサロンオーナーにとっては欠かせないのです。
減価償却費の計算に必要な要素
エステ機器を導入後、帳簿に記載する減価償却費を計算するためには、次の3つの要素が必要となります。
- 取得価額
- 法定耐用年数
- 減価償却費の計算方法
取得価額とは、エステ機器の購入代金はもちろん、送料や保険料などの付随する費用も含めた金額のことを指します。エステ機器の導入の際に、業者に手数料や設置費を支払った場合には、その費用も取得価額に含めることができます。
減価償却費の計算方法には、主に「定額法」「定率法」の2種類があります。定額法は、法定耐用年数に応じて毎年同じ額を経費計上する方法であり、経理処理がシンプルなため多くのエステサロンで使用されています。
一方の定率法は、耐用年数の1年目が最も減価償却費が高く節税効果が高まり、2年目3年目になるにつれて減価償却費が低くなる計算方法です。導入直後の資産価値が高い実態を正確に反映できる特徴がありますが、計算方法が複雑なため、使用する場合には税理士に相談することをおすすめします。なお、一度選択した計算方法は、途中で変更できない点にご注意ください。
減価償却費の計算方法
次に、定額法を用いた減価償却費の計算方法について、具体例とともにご紹介しましょう。ここでは300万円の業務用エステ機器(法定耐用年数5年)を購入した場合の計算例を解説します。
- 減価償却費:300万円 ÷ 5年 = 60万円
- 1年目の減価償却費:60万円
- 2年目の減価償却費:60万円
- 3年目の減価償却費:60万円
- 4年目の減価償却費:60万円
- 5年目の減価償却費:59万9,999円(利用中の場合は1円を残す)
- 合計:299万9,999円
原則として、購入した年から毎年60万円ずつ減価償却しますが、6年目以降も業務用エステ機器を使う場合には、利用中であることを示すために1円の資産価値を残すことがポイントです。この1円は「残存価額」「備忘価額」などと呼ばれます。
減価償却費の仕訳例・勘定科目
計算した減価償却は、Excelや会計ソフトなどを使って勘定科目・仕訳を記載する必要があります。減価償却費の勘定科目・仕訳の種類には、「直接法」「間接法」の2種類があります。
直接法では、減価償却費を固定資産の帳簿価額から直接差し引くことが特徴です。具体的には下記のような勘定科目で仕訳を行い、毎年固定資産の帳簿価額が60万円ずつ減少します。
借方 | 貸方 | ||
---|---|---|---|
減価償却費 | 600,000 | 固定資産 | 600,000 |
間接法では、固定資産の帳簿価額を減らすことなく300万円のまま残し、下記のように「減価償却累計額」という勘定科目で減価償却費を記載します。なお、直接法・間接法のいずれの方法を使った場合にも、納める税金の金額は変わりません。
借方 | 貸方 | ||
---|---|---|---|
減価償却費 | 600,000 | 減価償却累計額 | 600,000 |
減価償却における注意点
エステ機器を導入する際には、新品ではなく中古品を購入することもあるでしょう。中古品の耐用年数は、購入時の使用可能期間を見積もって耐用年数を算出するため、5年よりも短い耐用年数となる点に注意しましょう。
減価償却費を計上するのは、厳密にはエステ機器を購入した日ではなく、そのエステ機器を事業用に使い始めた日となります。購入してからすぐに使用せず、倉庫に置きっぱなしだった場合には、減価償却が計上できない可能性があるのでご注意ください。
また、エステサロンで使用するエステ機器の中で、10万円未満で購入した器具・備品は、資産ではなく消耗品として経費計上が可能です。「少額減価償却資産」の特例を使うことで、30万円未満の器具・備品について耐用年数にかかわらず一括で経費計上ができるので、経営状況に合わせて検討すると良いでしょう。
エステ機器は耐久年数・メンテナンス体制を重視して導入を
ここまでご紹介してきた通り、エステ機器の耐用年数は一律で5年と定められています。メーカーによっては5年よりも長い耐久年数を表示していることもありますが、長く安心して使えるかどうかはマシンの製品保証やメンテナンス体制によっても左右されます。そのためエステ機器を選ぶ際には、メーカーの耐久年数やメンテナンス体制も考慮しながら選択することが大切です。
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まとめ
エステ機器の法定耐用年数は5年と定められており、導入から5年目までは減価償却費を計上することができます。減価償却を行うことで、購入代金を耐用年数の5年間に分割して経費計上できるため、高い節税効果を得ることも可能です。本記事でも解説した勘定科目・仕訳例を参考にしながら、業務用エステ機器選びや経理処理にお役立てください。
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