「エステサロン開業に必要な届出は何があるの?」「自宅サロンでも開業届を出さないといけないの?」
これから独立開業を考えているエステティシャンの方や開業準備中の経営者様は、このようなお悩みが多いのではないでしょうか。
エステサロン開業にあたっては、準備が多すぎて混乱してしまうものです。しかし開業届の提出を忘れると、必要な手続きができなくなったり節税面で不利になったりします。
また提供するメニューによっては、保健所に届出が必要な場合もあるため事前の確認が必要です。
この記事では、エステサロン開業に必要な届出の詳細と、自宅サロンで開業届を出さないケースについて解説します。
開業届に必要な書類の準備や提出方法についても詳しく紹介しますので、最後までご覧ください。
エステサロン開業に必要な手続き
エステサロン開業に必要な手続きは下記の2種類です。
- 税務署へ開業届の提出
- 保健所へ開設届の提出(提供メニューによっては必要)
エステサロン開業は、営業許可書などの取得は必要ありません。美容室やマツエクサロンのように国家資格の取得は必要なく、誰でも開業できます。
ただし税務署への開業届の提出や、提供メニューによっては保健所への開設届の提出も必要。ここではエステサロン開業に必要な各届出について解説します。
エステサロン開業には開業届の提出が必要
個人でエステサロンを開業した場合、事業を開始した日から1ヶ月以内に税務署に開業届を提出する義務があります。
個人事業主は会社員とは違い、自身で年間の所得と納税額を計算・申告する必要があります。開業届を出すことは、新たに事業を開始して税金を納める意思を示すことにつながるのです。
また開業届を出せば、確定申告で青色申告ができるようになります。最大65万円の特別控除が受けられることは、事業者にとって大きなメリットでしょう。
開業届は提出しなくても罰則を受けることはありませんが、節税対策のほかにもさまざまなメリットがあるため、事業を開始したら早めに提出することをおすすめします。
エステサロンのメニューによっては保健所への届出が必要
開業するエステサロンのメニューによっては、保健所への届出が必要です。
保健所への届出が必要な、おもなメニューは以下の通りです。
- まつ毛エクステや眉毛カット
- 治療効果をうたったマッサージメニュー
- シェーバーなどの刃物を使ったシェービングメニュー
このようなメニューがある場合は、保健所への届出が必要とされています。
理容師法・美容師法・あはき法により、国家資格の取得と保健所への届出が義務付けられているからです。
また上記のメニューを提供する場合、必要とされる国家資格は以下の通りです。
- まつ毛エクステや眉毛カット=美容師免許
- 治療効果をうたったマッサージメニュー=あん摩マッサージ指圧師免許
- シェイバーなどの刃物を使ったシェービングメニュー=理容師免許
開業するエステサロンのメニューを確認し、資格や届出が必要か事前に確認しましょう。
エステサロン開業で開業届を提出するメリット
エステサロン開業で開業届を提出する、おもなメリットは以下の通りです。
- 確定申告で節税効果の高い青色申告ができる
- 屋号で銀行口座を開設できる
- 補助金や助成金の申請ができる
確定申告で節税効果の高い青色申告ができる
開業届を提出すると、確定申告で青色申告を申請できるようになります。青色申告を申請するためには「開業届」と「青色申告承認申請書」の二つを、事前に税務署へ提出する必要があります。
確定申告とは、毎年1月1日から12月31日までの1年間の所得と、それに対する所得税額を税務署に報告することです。
青色申告は確定申告の種類のひとつで、節税面で多くのメリットがあります。
青色申告のおもなメリットは以下の通りです。
- 最大65万円の特別控除が受けられる
- 赤字の繰り越しができる
- 赤字を繰り戻し還付が受けられる
- 経費対象の品目が増える
- 家族への給与を経費にできる
エステサロンは開業に多くの初期費用がかかり、売り上げが安定するまでに時間がかかることも。赤字繰り越しや繰り戻し還付が受けられる青色申告は、メリットが多いといえます。
青色申告の詳細は国税庁のホームページをご覧ください。
参考:青色申告制度|国税庁
屋号で銀行口座を開設できる
開業届を提出すれば、銀行口座を「屋号+氏名」の、屋号付き口座で開設できます。屋号付き口座とは、個人事業主が屋号名義で開設する事業用の口座のことです。
事業とプライベートの口座をわけることで、収支の管理が容易になり確定申告の手間も少なくなります。日々の経理作業も楽になり、サロン業務へより集中できるようになるでしょう。
また屋号付き口座があれば、取引先や顧客に安心感を与え信頼も得られます。
補助金や助成金の申請ができる
開業届を提出すれば、補助金や助成金の申請が可能になります。返済の必要がない補助金や助成金の制度が受けられるのは、エステサロンの開業や運営に大いに役立つでしょう。
また補助金や助成金を受給できれば、国や自治体に事業を認められたことになり、社会的信用度も上がります。事業の拡大で融資を受ける際には、優位に働くでしょう。
エステサロン開業に使える補助金・助成金については下記の記事をご覧ください。
関連記事:【2022年最新】エステサロン開業で使える助成金と補助金|違いや申請方法も紹介
エステサロン開業で開業届を提出するデメリット
エステサロン開業で開業届を提出する、おもなデメリットは以下の3つです。
- 青色申告には簿記の専門知識が必要
- 配偶者の扶養から外れる場合がある
- 失業給付金の受給が受けられなくなる
青色申告には簿記の専門知識が必要
節税面で多くのメリットのある青色申告ですが、申請には複式簿記による帳簿の記帳が必須となります。
複式簿記は単式簿記と違いある程度の専門知識が必要なため、経理の経験がない人は帳簿づけに時間がかかってしまうでしょう。また確定申告で提出書類が増えるため、申請のハードルは上がります。
しかし会計ソフトを使えば、帳簿づけや確定申告の提出書類の作成は比較的簡単です。クラウド型の会計ソフトであれば、月額1,000円ほどと低価格で利用でき操作性にも優れています。
代表的なクラウド型の会計ソフトは以下の3つです。
- freee会計
- やよいの青色申告オンライン
- マネーフォワード クラウド確定申告
どの会計ソフトもシンプルで使いやすい点が特徴です。まずは無料プランで使いこなせるか試してみましょう。
配偶者の扶養から外れる場合がある
開業届を提出し個人事業主になると、配偶者の社会保険の扶養から外れる場合があります。
個人事業主であっても年収130万円未満であれば、配偶者の社会保険の扶養対象とされています。
しかし健康保険組合によっては、収入に関係なく個人事業主は扶養の対象外になることも。扶養から外れると、国民年金保険料と国民健康保険料を個人で納める必要があります。
開業届を提出する前に、健康保険組合に確認しましょう。
失業給付金の受給が受けられなくなる
開業届を提出すると、失業給付金の支給が受けられなくなります。なぜなら、個人事業主になれば失業状態だとみなされないからです。
開業届の提出後に失業給付金を受給すると、不正受給になり厳しいペナルティが課せられます。開業したエステサロンの収入がなくても、開業の準備を始めた段階でハローワークに報告しましょう。
また再就職ではなく、個人事業主として開業した場合でも、受給条件を満たしていれば再就職手当の支給を受けられます。
自宅サロンで開業届を出す・出さないの判断基準
自宅でエステサロンを開業した場合も、個人事業主として税務署に開業届を提出する必要があります。
個人で事業を開業した場合、開業から1カ月以内に開業届の提出を義務付けられていますが、提出をしなくても罰則規定はありません。
そのため出すタイミングを見計らう人もいます。自宅サロンで開業届を今すぐ出す・出さないかは、得られる所得で判断しましょう。
- 年間の所得が48万円を超える(副業の場合は20万円)
- 今後、48万円を超える所得が見込まれる
上記の場合は、早めに開業届を出しましょう。開業届は簡単に提出ができ、多くのメリットがあります。
また開業届が未提出であっても、年間の所得が48万円以上の場合は確定申告が必要です。(副業の場合は20万円以上)
所得とは、収入から経費を引いた金額のこと。この48万円とは所得控除の基礎控除額で、2020年に38万円から48万円に引き上げられました。
エステサロンで毎月4万円以上の所得が見込まれる、または将来的に4万以上の所得を目指している場合は、早めに開業届を提出しましょう。
エステサロンの開業手続き・届出に必要な書類
エステサロンの開業手続き・届出に必要な書類は以下の通りです。
- 個人事業の開業・廃業等届出書(提出用・控用)
- マイナンバーカード
マイナンバーカードがない場合は、マイナンバーが確認できる書類と運転免許証などの本人確認書類が必要です。
青色申告を希望するのであれば「所得税の青色申告承認申請書」も同時に提出しましょう。
「個人事業の開業・廃業等届出書(提出用・控用)」は税務署で受け取る、または国税庁のホームページからダウンロードできます。
開業届の提出は無料で行え、税務署へ郵送する切手代や送料以外は一切費用がかかりません。
詳細は国税庁のホームページをご覧ください。
エステサロンの開業届の提出方法は3種類
エステサロンの開業届の提出方法は下記の3種類です。
- 税務署の窓口に直接持っていく
- 税務署に郵送する
- インターネット(e-tax)を利用する
税務署の窓口に直接持っていく
自身の納税地を管轄する、税務署の窓口に直接持参する方法です。窓口に持参すれば、記入ミスの修正や担当者に質問ができるなどのメリットがあります。
提出には、マイナンバーカードの提示が必要です。マイナンバーカードがない場合は、マイナンバーが確認できる書類と運転免許証などの本人確認書類で代用できます。
税務署の開庁時間は、平日の8時30分から17時まで。自身の納税地を管轄する税務署がわからない方は、国税庁のホームページで検索しましょう。
税務署に郵送する
自身の納税地を管轄する税務署に、開業届を郵送する方法です。郵送であれば、平日に税務署へ行く時間が取れない人でも提出できます。
開業届の郵送に必要な書類は以下の通りです。
- 個人事業の開業・廃業等届出書(提出用・控用)
- 返送用の封筒(切手を貼る)
- マイナンバーカードのコピーを「本人確認書類(写)添付台紙」に添付
- 所得税の青色申告承認申請書(青色申告を希望する場合は同封する)
郵送する際は、簡易書留など追跡が可能な方法で送付しましょう。
「本人確認書類(写)添付台紙」は国税庁のホームページからダウンロードできます。
参考:番号制度に係る税務署への申請書等の提出に当たってのお願い|国税庁
インターネット(e-tax)を利用する
インターネット(e-tax)で開業届を提出する方法です。
e-taxとは、国税庁が運営する国税電子申告・納税システムのこと。所得税や法人税などの国税に関する手続きを、インターネットで行えます。
e-taxで開業届を提出する際に必要なものは下記の通りです。
- パソコン
- マイナンバーカード
- ICカードリーダ・ライタ
e-taxを利用する場合、ソフトのインストールなどの事前準備が必要です。
またオンラインで提出した場合は、税務署の受領印はありません。送信したデータと受領通知を印刷し保管しましょう。
e-taxの利用方法など詳しくは国税庁のホームページをご覧ください。
参考:【e-Tax】国税電子申告・納税システム(イータックス)
エステサロン開業時の届出は計画的に準備しよう
エステサロン開業で必要な届出について紹介しました。
- 税務署への開業届提出
- 保健所への開設届提出(メニューによって提出)
エステサロンの開業が決まった時点で、開業届と青色申告の申請準備を行うとよいでしょう。メニューによっては、美容所開設届書の申請準備も必要になります。
また開業届は開業後1ヶ月以内に提出とされていますが、早めの提出がおすすめです。開業届の控えは、融資や屋号付き口座の開設など、さまざまな手続きで提出が求められます。
そのほか、詳しいエステサロンの開業準備については、下記の記事もあわせてご覧ください。
関連記事:エステサロン開業準備の手順 6ステップ|準備中の注意点も解説
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